ひさしぶりにテントを担いで
投稿者:吉田里美さん


 先週、久しぶりにテントを担いで、中央アルプスを縦走して来ました。
夜行で新宿を出、ほとんど眠れず伊那市で下車、すぐにタクシーに乗り桂小場より入山、木曽駒を目指して歩きだす。ちりめん坂の途中で、荷物に潰されない様、ストックがわりの棒切れを調達。時折、陽が射しそうなガスの中、足元のチングルマに気をとられながら歩く内、突然 山頂へ。「ウワー、着いたねー!」。
暫しぼんやりした後、テン場へ。テン場もガスの中。白い一日だった。

 夜中、風と雨音で目が覚める。朝は雨、あめ、雨。風もある。「今日は、停滞しよう」と決まった時、涸沢を想い出す。ひよっとして私は、雨女なのかなー。午後から雨がやみ、散歩がてら山頂に行こうと、フラフラでかける。暇にまかせて、ケルンを作ろうと四人で石を積む。いつか又きた時、大きく成っていることを願いつつ。 夕方から急速に天気が良くなる気配、日没まで空を眺め続けた。夜、八時頃、お隣のテントの三人組のおじさん達が騒がしい。耳を澄ますと、「スゴイぞー!」、「きれいだねー!」と、コーフン気味。星空が見えるらしい。私は、一人用テントから顔 を出し、空を仰ぎ見た。落ちてきそうな星空だった。

 翌朝、雲海の向こうから太陽が出た。朝日に染まりながら、テ ントをたたむ時、自然にフワンと優しい気持ちになっていく。少し軽くなったザックをしょい、中岳から宝剣へ。360度、全開。宝剣山頂で呆然。緑に埋まったピラミッダルな三の沢岳が、非常に近く感じられた。分岐にザックを 放置して、三の沢岳へ三時間のピストン。樹々の緑、吸い込まれそう青い空、お花畑、岩ひばり、渡る風、言う事無し。分岐に戻りサギダルの頭へ。ここからの雪崩で、松井さん、逝ってしまったんだなと、思わず合掌。
 檜尾のテン場めざして歩く。檜尾山から童話に出てきそうなメルへンチックな避難小屋がみえる。お花畑を駆け下り、水場に寄っ て小屋へ。何時からなのか、幕営禁止になってしまった為、小屋へ入る。私達四人、広すぎる板の間で、快適な夜を過ごした。
 翌朝も好天。でも、前日とちょっと違う感じ。行程が長いので、天気が続いて欲しかった。その内、ガスが 上がり始め、ブロッケンが出た。悪天の兆し。五時半スタ−ト、熊沢岳、東川岳、空木へとガスと小雨の中を歩く。尾根歩きで、行こうとする先が見えないのは、少し辛い。空木の登りは花崗岩、乾いていたら快適だろうなと想いながら、岩登り風なルートを丁寧に上る。山頂は、雰囲気のある空間を醸しだしていた。ここから南駒へ。不思議な事に、登りに差し掛かった時、ガスが切れ、陽が射して来た。「ウワー!どうしたの!」という感じ。山頂に着くと、越えて来た山々山々が見え出す。これから行こうとする峰々峰々も。「はい、これでお終いね」と、言う風に 又、ガスになる。この、60分余りの晴れ間は、非常に嬉しかった。南駒から仙涯嶺、越百山へ。ここが今回の終点。 越百山で、吉田さん達は、寒いのもきにせず、煙草をゆっくりと吸っていた。私には、ここから、小屋までの25分が とっても長く感じられた。16時30分到着、随分歩いたなー。でもよかったな−と思った。
 翌朝も、またまたガス。下山日なので気分が違う。降りたくないと思う気持ちと、早くお風呂に入りたいというのが、ゴチャ混ぜ。前日の 天気で靴がグチュグチュ、小屋から下山口まで3時間、そこからが大変だった。一時間、砂利道を歩き、ダムへ。そして、尚三時間歩いて須原へ。この四時間で、私の足の裏は、白くふやけた上、靴の色が付き、シワシワになり、水疱で埋まってしまっていた。途中で痛いなと思ったが、あきらめて歩いた。温泉に入って改めて足の裏を見たとき、「こんなになっては、岩登りが出来ないじゃない!」と、愕然とした。でも、二日で治ってしまい、今は大丈夫。今回の山行は、毎日ブルーべりーの実を食べながら歩いた、二勝三敗の山でした。ではー。

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