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日本での雪崩事故は欧米(ヨーロッパ、アメリカ合衆国、カナダ)などと違って人家、一般生活圏までその被害が及んでいないようです。しかし、登山者やスキーヤーではその尊い命をおとしていることも事実です。雪崩についての研究、学術書は多くありますが、雪崩発生のメカニズムに熟知していたとしても、また巷間行われる弱層テストを行ったとしても雪崩を予知することは非常に難しいものだと認識されることが良いでしょう。
昨年には、谷川岳一の倉沢の駐車場にあるトイレが雪崩によって吹き飛んでいます。つい今年、谷川岳マチガ沢にて「ホウ雪崩」が発生した模様です。マムシ岩の上に生えていた樹が雪崩の爆風で吹き飛んでいます。12年ほど前に北アルプスは爺ケ岳への登山道「柏原新道」右の斜面で膨大な雪崩が発生し、立木が中間部分から吹き飛ぶということがありました。その数日後に黒部丸山の岩壁を目指して徒歩で登っていった私はその地点を通過するまで冷や汗ものでした。現在は頑丈なスノーシェッドが出来ていて冬でもトンネルの中を歩く気分で通過できますが・・。黒部の志合谷、「ホウ雪崩」であまりにも有名な谷ですが、この谷を冬季に数回降りたことがあります。奥鐘山西壁の冬季登攀のためです。また、捜索でも3月に降りたことがあります。この谷で起こった「ホウ雪崩」は欅平からの上部軌道用トンネル工事の宿舎を対岸の岩壁に叩きつけています。現在その宿舎跡はコンクリート製宿舎跡として残っていますが、富山大学の雪崩調査機器が無人のまま稼動しているようです。そのどれもが雪崩による風圧によって大きな痕跡を残しています。これらは斜面に溜まった新雪が起こした滑落スピードの速い新雪雪崩と考えられます。山岳スキーヤーにとって管理されたピステで圧雪された斜面を滑ることは、その欲望を満たしているとは到底言いがたいものです。がしかしオフピステに出ることは冬山、雪山にでることなのです。それには冬山の知識・技術がなくてはなりません。雪崩についての知識もその冬山技術のひとつなのです。ここでは山岳スキーヤーが知っておくべき雪崩の知識を記述しておきます。決して学術的ではないため悪しからず。


雪崩の発生要因とは
雪崩は斜面に積もった雪が重力にしたがって下方に滑っていくことでありますが、降り積もった雪が堆積地による保持力を失ったときに発生するはずです。しかも雪崩発生の引き金になるのは自然の条件が満たされたとき、人為的力を加えられたときにわけられるようです。
1.自然に発生する場合。
雪が降り続けば必ず発生します。当然か!
雨が降ると発生します。これは新雪雪崩というよりも速度の遅い全層雪崩にちかいものが発生することが多いように思います。
雨が雪に浸透し、雪の層に保持力以上の重さが加わったためと考えられます。
みぞれ混じりの積雪のばあいには発生する確率が高いようです。この原因は前記と同様と思われます。
気温の変化によって発生する。これはどのようなメカニズムで発生するのか解りません。が、谷川岳一の倉沢でクライミングをしていると滝沢側に日が射し始めると谷筋のいたるところから雪崩が発生します。また、夜中に一の倉沢駐車場付近にツゥェルトでビバークしていたところ本谷を飛んできた雪崩の末端に埋まったことがあります。幸いに雪崩の末端であったことでツゥェルトがつぶれ、パートナーが登攀具を紛失しただけですみましたが夜半に雪はふっていなく気温の変化しか考えられませんでした。
2.人為的力を加えた場合
急な雪の斜面を横断して、ストレスの溜まった雪壁を切ってしまうときに発生します。
谷川岳本谷を登っていくと、人の体重を加えただけで堆積していた雪が「バシ」と切れる音がすることがあります。雪崩には至らないまでも雪中で部分的に切断されているものと思います。登攀、登山の場合に雪の斜面を横切ることは極力避けるようにし、真っ直ぐ上に登るため簡単には雪面が切れることは少ないようです。しかしスキーのばあいには斜面を簡単に横断できてしまいますし、新雪の雪崩そうな時こそスキーヤーの至福の時なのです。これで雪崩ない訳がありません。


ではどんなときに雪崩が発生すると注意すればよいのか
しばらく天候が良かった後に新雪が20cm以上降った場合には40°以上の斜面では絶対に雪崩るといっていいと思います。
雨が降っているとき。大きな雪崩がでる恐れがあります。こんな日は急斜面での山スキーはあっさり諦めましょう。
以前、黒部丸山を5月連休に登攀中でした。折からの空模様がついに雨になり、後立山側の斜面、谷筋で雪崩が発生しはじめました。そのすごさは大砲でも撃っているのではないかと思われるほどすさまじいものでした。対岸の我々のいる位置まで1Km以上あるのに空気がビリビリと震え、ドカーンと音がするのです。
天候が急に暖かくなった日、逆に寒い日には雪崩にくいと感じています。


ではどんなときに雪崩は発生しないと考えて山岳スキーを決行するか。
しばらく、積雪がなく天候が安定していて、気温が高くないとき。
新雪の翌日でも広く、傾斜の緩い尾根筋では雪崩にくい、谷筋に入ると一転雪崩の巣になるので注意が必要である。
山岳スキーヤーの雪崩事故の多くが人為的に発生していて注意すればその殆どをさけることが可能だと認識すべきである。
雪崩そうな地形、場所をさけてスキー滑走する。


雪崩事故防止のための予防策
弱層テスト
ゾンデによる積層チェック
私のよく行う簡易チェック方法です。携帯ゾンデ棒を雪面に垂直に軽い力で差し込んでいきます。堅い層があると入りませんからその層までの深さを調べることが出来ます。次ぎに力を加え次ぎの層まで差し入れます。このようにして雪面を掘ることなくある程度の弱層をチェックすることが出来ます。堅い層は「しもざらめ状態」と考えられ、堅ければ堅いほど上の層と破断がしやすいと考えられます。
雪について知るための用具の紹介
雪の結晶を見るためのルーペ(X20、Lifelink) 雪の結晶図解説集(Lifelink) 雪中温度計(Lifelink)
夢の雪崩予知テスト
前記の弱層テストではテストの結果を雪崩予防に結びつける評価の段階で多くの主観が入り込みますし、弱層があるからといってスキーヤーに滑走の中止を申し渡すものではありません。
それでは理想的な雪崩予知とはどんなものでしょうか。雪の斜面はいくつかの堆積層があり、下方向にスライドしようとしています。この力がある値をこえると雪崩が発生することは理論的に解ることですがこれに抗する応力を瞬時に解明してやるか、あるいは現在の積層のストレスがどの程度になっているかを解明できる方法があるとしたらより直接的な雪崩予知に繋がるものと思います。そんな方法はいまのところありません。


雪崩に注意した滑走方法
雪崩そうな斜面での注意点をいくつか記述しておきます。これは私が実際に注意している点です。
確実に雪崩そうな斜面ではなるべく上端を横断する。これはスキーヤーばかりでなく登山者についても言えることですがストレスのかかった斜面を下端、あるいは中間で横断することは自殺行為に等しいように思います。
スキーヤーが斜面を横断しなくてはならない場合、あるいはその斜面の安全を確認したい場合には一人づつ滑走し、他のものはその様子を覗っている。雪崩そうな斜面を横断する場合には1箇所に固まって行動しないことは鉄則です。登山者についても全く同様なことが言えます。日本人は1箇所に固まって行動しやすく、皆集まれば怖くないのたとえどうり雪崩にあうときも一緒にあうことが多いようです。
上部に雪田帯がある場合には樹林帯といえども雪崩にあう注意がひつようです。


もしも雪崩にあったらどうするか
幸にも私は数回の雪崩に遭遇しても生命、身体にダメージを受けてはいません。それは雪崩の規模と一瞬のタイミング、幸運が味方したものと思っています。しかしこの数回の恐怖の体験からもしも皆さんが雪崩にあったときの心構えをいくつか書き記しておきます。
もしも、雪崩にあったら大声で叫んで下さい。仲間の注意を引きつける必要があります。
雪崩にあって流されているときには身体は自由に動きます。しかしその規模によっては方向感覚が全く失われてしまいます。上下左右もわかりません。雪面に出るように努力しましょう。あるいは雪崩の左右のサイドに出来る限り移動しましょう。この雪崩にのって動いているとき、流されているときにはアッこれは大丈夫かな!と思うものです。
雪崩に流されながらそのスピードが弱まるのを体感できます。この瞬間が非常に恐怖感を感じます。今まで動いていた手足が雪崩が動きを止めると同時にしっかりとコンクリートされます。この直前に気道を確保しなくてはなりません。両手で頭を抱えるスタイルにして口の前に空間を作ります。
新雪雪崩では、口の中にも鼻の中にも耳にも雪が入ってきます。口はしっかり閉じておきましょう。
雪崩が完全に止まったら焦らずに落着いて、呼吸が出きるか確認してください。体が動けないと焦るものですが、焦ると酸素の摂取量が増えます。呼吸が確保出来る場合にも地上より自由にはできないはずです。このまま仲間の救助を待つしかないことを早めに理解しましょう。
雪中からは雪上の捜索者の声が聞こえます。声が出せるなら叫んで場所を知らせてあげましょう。ビーコンを持っていない場合には雪上に身体の一部が出ているか、声で知らせる以外に捜索者に場所を知らせる方法がありません。


雪崩埋没者のレスキュー(救助)技術の要点
もしも、雪崩遭難者が流されるところを目視出来ていた場合には埋没個所を特定することが容易になります。雪崩が治まると同時にその個所に急ぎ、雪面から声をかけてみます。耳を済ませ応答を待ちます。
遭難者がビーコンを携帯していた場合には、即座にビーコンによる位置の特定を行い、スコップにて掘り出します。

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