立山、剣岳山岳スキールート技術情報


写真は鹿島槍頂上からの遠望です。滑走ルートを赤線で見える部分のみ記しています。


立山、剣岳稜線から黒部側は深い谷を形成し積雪量も豊富なことから山岳スキーの最も盛んなところといって良いでしょう。なかでも、上の写真にはない、御山谷(☆)がもっともポピュラーで登りのアルバイトが室堂から1時間足らずといった手軽さで楽しむことが出来ます。ここでは、その御山谷は除いて他の黒部側のルートを紹介してみます。難易度、と素晴らしさから☆マークをつけてあります。

東一の越〜田圃平(☆☆)
御山谷に次いで人気のルートです。また、滑走終了点は黒部ダムサイトに最も近く、日帰り滑走を楽しむ方には格好のルートかもしれません。
ルートは一の越より御山谷を滑り、夏道沿いにスキーを担ぎます。東一の越からは眼下の大斜面のどこを滑ることも可能です。田圃平へ出たら黒部平のロープウェイ駅を目指します。ロープウェイ駅下から右に進路を変えて樹林帯の尾根を滑ります。この尾根を忠実に滑ると「ロッジくろよん」の山荘前に出ることが出来ます。一般には、黒部平から尾根に滑り込み尾根が狭まった地点から左の樹林帯に滑り込むとコンクリートで舗装された遊歩道に出ることが出来ます。あまり手前で左に滑り込むと「かんぱ谷」に入ってしまいますから注意してください。

御前谷〜田圃平(☆☆☆☆)
ほぼ3000mの標高から滑走することでは富士山に次ぐルートといえます。しかも比較的アルバイトも少なくて済みます。室堂から2時間で充分スタート地点に立つことが出来るでしょう。
先の御山谷、田圃平の滑走に比較すると滑走上の難点が2点あります。一点はスタート直後の急斜面が初級のスキー技術では不可能なこと、もう一点は田圃平へのトラバース地点を的確に判断しなくてはならない点です。また、降雪直後は滑走を中止するべきでしょう。カール状のどの場所も雪崩の被害に合わないところは無いといって良いでしょう。
スタートは雄山頂上の社務所前からです。急斜面も一見すると距離がなさそうにみえるものの結構長いことに気付くでしょう。急斜面が終えたら素晴らしく広大な雪原にでます。そう御前沢カールです。延々と続くこの雪原を滑走し、右の尾根に樹林が見え始めたらその樹林下ぎりぎりのラインでなるべく水平に右斜面をトラバースします。3つ小さな尾根を越え4つめの尾根でストップします。この尾根をスキーを担いで約50mほど登ると田圃平への鉄塔のある稜線に出ます。田圃平への稜線に登り返さない方法は、手前で稜線に滑り込み、御前谷側の斜面に滑り込み、右に岩の露出した個所から
水平にトラバースを開始すると丁度鉄塔のある稜線に滑り込めるはずです。
このルートの危険個所は、雪崩とトラバース中の上からのブロック崩壊です。

内蔵助谷〜黒部川(☆☆☆☆)
立山剣の滑走ルートの中で最も大きな標高差を滑る長大なルートといえます。
しかもルート中には穏やかなカールの滑走があり、標高差500m、斜度40度の一枚バーンの壁があり、川の流れが聞こえる谷筋ありと変化に富んでいる点でも他のルートを圧倒する迫力があります。
アプローチは一般的には、室堂側の大走り登山ルートぞいにシールをつけて登ります。しかし、より短時間で真砂のコルに到達するには一の越山荘に前日宿泊し、朝一番で室堂側を小走り谷手前の台地まで斜滑降で滑ります。そこから小走り谷までシールをつけて登ります。シールが効かなくなったら登山用アイゼンに履き替えて300Mほど登ると真砂のコルに直接飛び出すでしょう。
カールの滑走は何処を滑っても快適です。カールが終わると左のクーロアール沿いにルートを取る場合は上部からの雪崩に注意が必要になります。コースは狭く下部に必ずデブリがありますのであまり快適な滑走は期待できません。右の標高差500Mのバーンは上部に立つと急傾斜でビックリすることと思いますが南面のため早朝、夕刻以外は硬い雪ではなく滑走には適していることでしょう。素晴らしい大斜面です。このスケールの一枚バーンを立山・剣でほかに見ることは出来ないはずです。クライマックスの斜面を終えると内蔵助平までは緩やかな滑走が楽しめます。内蔵助平から黒部川までは年によって積雪量が違います。もしもここを登山道沿いに歩かなくてはならない場合はこのルートの滑走は諦めることが最善です。この判断を現地に行かずにするには黒部平から黒部湖への滑走が出来ない時期、年には諦めるべし、としておきます。この内蔵助谷の滑走は左に川が現れてきますので慎重にしなくてはなりません。いたるところに立ち木、シュルンドが隠れています。黒部川まで滑れたら祝福します。黒部川の川面を眺めて大休止し、スキーを担いで黒四ダムに戻りましょう。私の立山山岳スキーツアーでもメインルートにしており、出来る限り疲労の少ない日程前半で滑走することにしています。このルートは足並みが揃わないパーティには長時間の行動がありますので不向きです。

真砂沢(☆☆)
全記3ルートに比較すると、以下のルートは登ることをあまり厭わない方にお勧めです。
アプローチは前述の内蔵助谷ルートとほぼ同様です。真砂岳からスタートすると若干急斜度を滑りカールに入ります。快適なカールを進むと谷が狭まりルートは左へ曲がって真砂沢の小屋上に飛び出します。
帰路は一般的に剣沢をシールを着けて登ります。
もしも、ハシゴ谷乗越を越えて内蔵助平側へ滑り込むには夏の登山道より下流から直接ハシゴ谷をシール登行する。約1時間のアルバイトを覚悟しましょう。そうして繋げるとこのルートも三つ☆以上になるでしょう。ハシゴ谷からの滑走は結構立ち木が多いため快適とはいえません。内蔵助平からは前述のルートと同一です。

別山沢(☆)
この沢は短く、ストレートな沢です。滑ったことがないなら滑ってもいいか・・・と言った程度と記しておきたいとおもいます。
スタートは、別山からではなく、剣沢から入ることが良いでしょう。丁度、剣沢小屋の上の斜面を稜線まで200Mほど登ると入ることが出来ます。帰路はやはり剣沢をシールで登りましょう。もちろん、真砂沢同様にハシゴ谷を越えて内蔵助平〜黒部川にルートをとることも可能です。

剣沢(☆☆)
日本三大雪渓のひとつ剣沢雪渓は滑っておきたいルートのひとつです。あまり斜度がなく、山スキーの初心者にも充分楽しむことが出来ます。スタート地点は御前小屋からでも当然可能ですが、アイゼンを着けて剣御前岳まで登りそこから急斜面を滑り剣沢にはいっていくとより充実するでしょう。一般的に、下流部ではデブリが多く快適な滑走を期待するのは上流部のみとなることが多いように思われます。帰路は剣沢を登り返します。もちろん、真砂沢、別山沢同様にハシゴ谷を経由して黒部川に至るルートも可能です。

三の窓雪渓
次の4ルートは上記のルートに比較すると滑走する人は限られてくるでしょう。よりアルペン的要素が増し、登山経験を要します。アイゼン、ピッケルワークが必要になりますし場合によってロープが必要になります。
三の窓は立山剣の中では5月連休の頃にはクライマーの別天地となります。夏とは比較にならないほどアプローチが容易になりますし、ヨーロッパアルプスの風貌を感じさせてくれます。テントが張られ、あるいは雪洞が掘られ、チンネ、剣尾根周辺、池の谷等の登攀を目指す方で賑わいます。
山岳スキーヤーの一般的なアプローチは剣沢を経由して三の窓雪渓をスキーを背にアイゼン登行が安全といえます。馬場島(ばんばじま)から池の谷(いけのたん)左股を登ってくることも可能ですがゴルジュ帯があります。また、長次郎雪渓から池の谷乗越を経由して池の谷ガリーを下る方法もありますがどちらもクライマーの世界です。
滑走は、早朝の氷化したカリカリの雪面より日が差して表面が軟化してからスタートしましょう。チンネを右にみてスタート直後は急斜面です。ところどころ急斜面が出現しますが概ねストレートで一様な斜面が続きます。
帰路は、真砂経由して剣沢を登ります。
このルートの魅力はアルペン的気分を味わえるところでしょうか。
次の装備を忘れずに、アイゼン、ピッケル、ツウェルト、雪崩対策用品です。
天候が心配な場合は止めておきましょう。5月連休でも1Mくらいの積雪があったことがあります。
早朝に剣沢小屋を出発して〜三の窓雪渓〜三の窓〜滑走〜剣沢小屋の行程で一日です。歩行に自信のない方は帰路に真砂でビバークを覚悟しましょう。

小窓雪渓〜北股
三の窓同様にアプローチは剣沢から真砂を経由して二股から北股、小窓雪渓とシール登行します。三の窓雪渓とは違った穏やかで静かな世界です。小窓からは小窓王の岩峰が直ぐ傍に見えることでしょう。
滑走は、小窓雪渓〜北股とつなぎ剣沢を帰路に登ります。
静かな滑走を楽しみたい方にお勧めします。
早朝に剣沢小屋出発して〜小窓〜滑走〜剣沢小屋の行程で一日です。歩行に自信のない方は帰路に真砂でビバークを覚悟しましょう。

池の平山
池の平山は小窓同様に剣沢、北股を経由して平の池に登ります。池は当然雪の下なんですが・・。そこから尾根をシール登行します。頂上からは素晴らしい大斜面が広がっています。小黒部谷に入らないように注意しながら平の池、北股と経由して剣沢を戻ります。
早朝に剣沢小屋出発して〜池の平山〜滑走〜剣沢小屋の行程で一日です。歩行に自信のない方は帰路に真砂でビバークを覚悟しましょう。

真砂沢〜剣沢〜小窓〜西仙人谷〜白萩川〜馬場島
このルートは中間に小窓雪渓を登ることを厭わなかったら最も長大なルートと言えます。がやはりアルペン的要素が高く単独での滑走はお勧めできません。
真砂沢を滑るにはやはり、前日一の越山荘に宿泊することをお勧めします。早朝室堂側を滑走し小走谷を登って真砂乗越を経由し真砂岳に8:00には着いていましょう。他からでもこの時間にスタート地点に着くことがこの滑走の条件です。真砂沢を滑走し、小窓雪渓を登ります。小窓には13:00に着かなかったら前記の小窓雪渓を滑って引き返すほうが賢明です。小窓から西仙人谷へは最初の30mほどが急斜面のためロープによる下降が必要になります。ロープを使って降りてからも暫くは急斜面が続き、左右の岩場が迫っていますので注意すべきところです。傾斜も弱まり右にカーブすると大窓雪渓と出合い、白萩川に出ます。傾斜の緩んだ白萩川を馬場島目指して滑ります。途中、多くの場合には二箇所の渡渉があることを覚悟しましょう。取水口の堰堤から馬場島までは年によって歩かなくてはならない場合もありますがもう馬場島は直ぐ傍です。
白萩川の渡渉、西仙人谷へのロープ下降等を考慮すると早めの行動が必要となってきます。
このルートでは必ず、アイゼン、ピッケル、ロープをお忘れなく。

14年前の古い写真でごめんなさい。小窓から西仙人谷方向を向いた一番☆です。

西仙人谷と小窓です。
ストレートな谷のため直ぐそばに見えている小窓ですが
距離と、斜度がありますので御注意下さい。

他に上段の写真の池の平山右に大窓が見えています。ここから白萩川側の大窓谷雪渓を滑るには一旦、小黒部谷に滑り込んで大窓に登らなくてはなりませんが一番☆にその経験が無いため書けません。
大窓谷雪渓を滑走してくる二人のスキーヤーを白萩川から望見したことはありますがルート状況がどうなっているかはわかりません。参考に白萩川から見た大窓谷雪渓の様子を下に載せておきます。

白萩川から見た大窓と大窓谷雪渓。
西仙人谷からですと赤ラインから出てくる。
大窓谷雪渓は西仙人谷より傾斜も緩く、距離もないように感じる。

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